大人の恋は複雑で…素直になるのは難しい
立ち尽くす私の前にきて、ぎゅっと抱きしめてくれた。
「言わなくて、ごめんね」
「俺がはっきりさせなかったから悪いんだ。…もう、俺と会いたくないとか言わないよな?」
奏の背中に抱きついて首だけを振る。
「よかった…」
本当に、ホッとした声で奏が安堵したのがわかった。
「警察に相談するか?」
「奏には、心当たりあるんだよね?」
「多分だけどな…ちょっと俺たちだけの問題じゃなくなる」
「どう言う事?」
「とりあえず、健にも相談してからだな…それからまずは警察だ」
奏の上着の背をぎゅっと握った。
「俺も一緒に行るから、安心しろ」
すぐに警察に連絡すると、アパートに警察官が来て、事情を説明して、証拠品とドアの写真を撮って帰って行った。
届けを出すかで悩んだが、奏と健さんのの知り合いかもしれないと言う事で、相談してからと言う事になった。
とりあえずしばらく、アパートの辺りを巡回してくれるらしく、私は奏のマンションにしばらくお引越しすることになり、最小限の荷物を持って、タクシーを呼んだ奏と一緒にマンションやって来た。
「ここなら、セキリュティもしっかりとしてるから、安心しろ。もう、いっそのこと引越ししてこい」