大人の恋は複雑で…素直になるのは難しい

マンションのロビーには、常にコンシェルジュがおり、誰構わず出入りできないように警備は万全の体制を整えてあるらしい。

最初にここに訪れた時は、健さんを忘れたくて周りが見えていなかったし、奏に興味もなかったから、気にもならなかったけど、この若さで、普通のサラリーマンが住めるマンションじゃないと今更ながらに思う。

私は、奏の何を知っているのだろう?

職場も、何をしているのかも、趣味も、家族構成も知らない。

知っているのは、健さんの親友って事と、臣さんが同僚って事以外、改めて、ほとんど何も知らない事を思い知らされてしまう。

本当に、私って奏に興味なかったんだな…

関係が続いた後も、知ろうともしなかった。

いつの間にか、私のアパートの部屋に帰って来るのが当たり前になっても、深く考えないようにしていた。

よく見ればわかる…
着ているもの
身につけているもの
立ち振る舞い

それに、指輪を買った時にの従業員の態度に、ただ者じゃないと気がついていたのに、怖くて気がつかないふりをした。

気がついてしまったら、私のような普通の人間が彼の側にいるなんてふさわしくないと思い知らされる気がして…

素直になれない理由もここにあった。
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