大人の恋は複雑で…素直になるのは難しい
エレベーターが止まり、奏の部屋がある階に止まったらしくドアが開いた。
ここに来て、また思い知らされる。
この階には、ドアが4つしかない。
こんな所に、普通のサラリーマンが住めるはずがないのだ。
「奏って、実はお金持ち?」
「…親がな…俺は普通のサラリーマンだ。それが一緒に住めない理由か?」
こんな時だけ感がいい…
それだけじゃないけど、この不安な気持ちを奏はわかってくれない。
何か言葉をくれたら、嫌がらせを受けても頑張って立ち向かえるのに…
何も言い返さない私の手を掴み、奏では自分の部屋のドアを開け私を押し込んだ後、持ってくれていた私の荷物をその場に置いてぎゅっと抱きしめてきた。
「親が金持ちだと知ってそんな顔するのはきっとお前ぐらいだ」
「うん、戸惑ってるよ」
「女は、大抵喜ぶのに、お前は戸惑うのかよ」
「ずっと、普通のサラリーマンだと思ってたから」
「今は普通のサラリーマンだ」
「今は、なんだね」
いずれ、何かの役職につくという事なんだろ!
「俺のせいで嫌がらせされるし、普通のサラリーマンじゃないから、もう俺と会うのやめるとか言わないよな?…まさか、イヤになったから週末だけここにいて向こうのアパートに帰るって言い出したのか?」