大人の恋は複雑で…素直になるのは難しい
「大人になると10代と違って好きって気持ちだけで突っ走るなんて無理なんだよ…バカ奏」
奏が寝ている事をいいことに、奏の鼻先を軽く摘んだら、少しだけ、首をふり嫌がる素振りを見せた。
今はあやふやな関係だけど、一緒に住むなら、遠くない未来を夢見たい。
いつか奏と私の子供と、幸せな家庭を持ちたいと思う。
でも、それには好きだけじゃ一緒になれないのが大人。
親も絡んでくるし、お互いの家庭環境の違いも出てくる。
他にも複雑な事情なんかも出てくるのが、大人だ。
それなのに、お互いの両親に挨拶なしに突然の同居なんて、奏はよくても、今後の事も考えれば最初はいい印象を持ってもらいたいと思う。
簡単に、思うままの感情で『引っ越して来い』と言われて、『はい、そうですね』と素直になれないのが、大人の事情というものだ。
社会人にもなって、そんな事もわからないのが、男と女の違いなのだと思う。
好きさえも言われてない私が、何を語っているのか…
奏…好き、大好き
心で大きく叫んだ後、奏の胸にうずくまり、疲労のせいで睡魔に負けて眠くなる。
今は、もう考えるのはよそう。
この腕の中の居心地の良さのせいにして、うとうとしだす私の頭を撫でる手に安心して深い眠りについていた。