大人の恋は複雑で…素直になるのは難しい

だけど、こちらにもいろいろ譲れない事がある。

「守ってもらうだけじゃ、嫌なの」

素直に喜ぶと思っていたらしい奏では、キョトンとした顔でいる。

そして…

「お前、らしいわ。それでも守らせろ」

ほら、飯食うぞとばかりに、奏のルームウエアを頭から被せられ抱き上げられてのお姫様抱っこに、奏の首にしがみついた。

「歩けるよ…おろして」

「嫌だね、一日中寝てて俺を放置してたんだぞ」

「そうなったのは…」

「俺のせいだから、世話してやる」

ニヤッと笑った奏に、お風呂に入れてもらい体も頭も洗われ、恥ずかしくてしかたないのに、『いまさらだ』の一言で片付けられて、今は奏の膝の上で横座りで食事中。

温めるだけになっていた奏作のカレーライスは、ひき肉と玉ねぎだけなのに、とても美味しい。

「美味いか?」

「うん、美味しい」

「市販のルーだけどな…」

耳をほんのり赤くした奏、照れている証拠だ。

怒ると目尻が釣り上がる

笑うと顔中をくしゃくしゃにして笑う

照れると耳をほんのり赤くする

困ったり焦ったりしたら、髪をかきあげる

泣いたら?

なんて思っていたら、首元に顔を埋め抱きしめてきた。

「食べにくいんだけど…」

「俺の膝の上にいるのに何考えてるんだよ」
< 157 / 211 >

この作品をシェア

pagetop