大人の恋は複雑で…素直になるのは難しい
2度ほど来ていた時は気がつかなかったのか、興味がなかったからなのか、今は周りを見る冷静さを持っていて、コンシェルジュが常駐する事に驚いていた。
「ここなら、セキリュティもしっかりとしてるから、安心しろ。もう、いっそのこと引越ししてこい」
「…考えてみるね」
怖い思いをしたというのに、こんな時でも素直にならず頷かない。
「菜生…」
心配する俺の気持ちが通じないのだ。
まぁ、引っ越しは当分先でもしばらくはここに住んでもらうからと、コンシェルジュに菜生が滞在する事を伝えエレベーターに。
「とりあえず週末だけ、お世話になろうかな」
何言ってるんだ?
また、あそこに戻って何かあったらと考えないのかと腹立たしくなる。
「はあっ?お前やっぱり馬鹿だろ」
思わず俺が荒げた声にビクッと体を揺らす姿に、怖がらせたと反省し、怒りを沈めながら話しかけたつもりだが、口から出てくる言葉は止まらない。
「怒ることじゃないだと…もしかしたら俺のせいでお前に危害が及ぶかもしれない。いや、起こらせないけど、俺の目の届く安全な場所にいてほしくて言ってるのに、何も片付いてないのに帰るだと…馬鹿じゃないなら、なんて言えばいいんだ?アホか?」