大人の恋は複雑で…素直になるのは難しい
「…付き合って…ないよ」
「はあっ?あれだけの甘いセリフ言われていて付き合っていないって、何なの?…ちょっと奏くん」
両手で勢いよくテーブルを叩いた智奈美は、リビングにいる奏に向かって叫んぶと、奏と健さんは、こちらに顔を向けた。
「ちな、突然どうした?」
「どうしたもこうしたもないよ。奏くん、菜生の事どう思ってるの?いつもの遊びじゃないでしょうね?」
ヒートアップする智奈美の裾を引っ張って落ち着くように促すも、止まらない。
心配してくれているのは嬉しいけど、自分の気持ちに気がついたばかりで、まだ、はっきりと奏に気持ちを伝えてない。
「ちな、心配なのはわかるが2人の問題だ」
珍しく自分を諌める健さんに、唇を尖らせ不満顔の智奈美。
「…智奈美ちゃんが心配するような事はないよ。さっきも宣言した通り俺は本気だ」
それは、智奈美に言ってるようで私に言ってる気がしたのは、奏が真剣な顔で見つめてきていたからだ。
「わかった…奏くんを信じる」
新婚家庭にいつまでもお邪魔するのは野暮というもので、頃合いを見計らっておいとまさせてもらい、奏のマンションに帰ってきた。
「まだ、アパート帰るって言わないよな」
リビングに入るなり、奏が振り返る。