大人の恋は複雑で…素直になるのは難しい
「時間は作るわ。今日の仕事帰り…ううん、ダメね。落ち着いて聞きたいから、金曜の夜、仕事終わりに飲みながらにしましょう」
「お酒のつまみにしようとしてます?」
「つまみどころかメインでしょう!なんだか面白そうな話が出てきそうだし、ゆっくり時間をかけて堪能したいじゃない」
はぁー、そうですか…
時間が戻るなら、5分前、いや、それよりも一昨日の二次会の時間に戻ってほしい。
諦めの悪い私は、この日から何度も時間が戻るならと叶わない願いを願っていた。
とうとう、約束の金曜日…気が重い。
体中についていたキスマークはほとんど気がつかないほど薄れているのに、奏との夜は薄れていかない。
酔っていたのに覚えているなんて…それをこれから優希さんに話さないといけないと考えるとため息しか出てこなかった。
「何、何度もため息なんてついてるの。諦め悪いわよ」
「話たくない内容なんで」
「覚悟を決める猶予をあげたでしょう。私は月曜からずっと聞きたいのを我慢してたんだから、逃がさないわよ」
ガシッと腕組みされ、拘束されて向かう先は飲み屋が多い駅前通り。
その中の一つ、優希さんお気に入りの居酒屋に入った。