大人の恋は複雑で…素直になるのは難しい
「うん、見ればわかるわよ」
ビールを一口飲んで枝豆を摘みながら優希さんはこちらの話を聞いている。
「その…痕を残した奴なんですけど」
優希さんに力強く全否定した手前、言いにくい…
「男じゃなく、奴扱いって…知り合いなのね。まさか…例の女を取っ替え引っ替えの彼なの?」
目をキラキラさせて、ビールをゴクリと飲んで口元を手の甲で楽しそうに拭う彼女は、完全に色っぽい話を期待している。
そんなのじゃないのに…
「まぁ、間違ってはないですけど、お酒の勢いでというか、私から頼んだんですけど…お互い恋愛感情があった訳じゃなくて…雰囲気で、やっちゃいました」
ペシッとデコピンが飛ぶ。
軽蔑されたのだろうか?
「何、その軽い言い方。お酒の勢いでとかでそんな事するあんたじゃないでしょう!そこに至るまでの原因があるからでしょう。全部吐き出してしまいなさいよ」
私をわかってくれていて、ちょっとだけウルっと涙が出てくる。
「…私、親友の旦那さん、当時は彼氏として紹介されたんですけど、一緒に何度も遊ぶうちに、その親友の彼氏に気がついたら恋してたんです。バカですよね…結婚式当日までは、自分の気持ちにケリをつけたつもりだったんですけどね、祝福する気持ちの反面、見てるのがつらくてやけ酒です」