大人の恋は複雑で…素直になるのは難しい
「すみません…俺らが混ざって大丈夫ですか?」
これが常識のある人の聞き方だ。
「大丈夫だから、席空けてくれたんだろ。ねぇ、優希ちゃん」
「もちろん、大歓迎ですよ」
私は、歓迎なんてしてないのにと、優希さんを恨めしく睨んだけど、完全に奏がキスマークをつけた犯人だと確信して、面白がっている。
「お二人は何、飲みます?」
「とりあえず、ビール」
「俺も、それで」
臣さんは、謙虚だ。
奏のように図々しくない。
「菜生、それ何杯目?」
「まだ、一杯目だけど」
「ならいい。酔っ払い相手にしないといけないかと焦ったわ」
「相手にしなきゃいいじゃん」
プイとそっぽを向いて残っていたジョッキの中身を飲んだ。
優希さんが、近くにいた店員にビールを四つ頼んであらためて自己紹介。
「私、菜生の同僚で松山 優希です」
「俺は、斉藤 奏…28。菜生とは訳ありの仲」
「その誤解を招く言い方やめてよ。先週、結婚式を挙げた親友の旦那さんのお友達ってだけでしょ」
…今、優希さんを前に墓穴を掘ってしまった…
そっと、優希さんを見ると、(ふーん、やっぱりね)って顔で頷いている。
最悪だ〜