大人の恋は複雑で…素直になるのは難しい
慌てて、話をそらす事にした。
「臣さんって本名ですか?」
「そう、城之内 臣人(おみひと)って言うんだ。友達は、臣って呼ぶから優希ちゃんも菜生ちゃんもそう呼んで。てか、勝手にちゃんづけしてるけど、大丈夫?」
「臣さんなら全然大丈夫です。ねぇ、優希さん」
「臣さんも28なんですか?」
「うん、見えない?」
「いえ、私より若く見える」
「そんな事ないよ。優希ちゃんはいくつ?て聞いて大丈夫?」
優希さんは、ニコッと笑うだけ…臣さんはしつこく聞き出さない。
うん、やっぱり、常識人だ。
それなのに隣の奴と、どうして連んでいるんだろう?
ちらっと隣を見ると、頬を抓られる。
「お前、今、俺の悪口思ってたろ?」
「思ってないよ」
「嘘つけ…眉間にしわ寄せて、いつも悪態つくときと同じ顔してたぞ」
「うそ」
咄嗟に、眉間のあたりを指で伸ばす。
「やっぱり、悪口だったんだな」
「きゃはは、菜生、わかりやすい。奏さんの前だと、単純なんですね。そういえば、この間も、奏さん関連で墓穴掘ったばかりだしね」
優希さん、何言っちゃてるんですか⁈
勘弁して…
口元に人差し指を立て、しーと口止めする仕草をしたのに、訳知り顔で「シーね」と口元を止めた。
もう、やだ…完全に色っぽい方向に考えてるよ。