大人の恋は複雑で…素直になるのは難しい
ニタリと笑う優希さんから飲んで逃げるしかない。
「あ、ビールきました」
「よし、なら乾杯する?」
それぞれにジョッキを持って、カチンと鳴らして各々のペースで一口目を飲んだ。
私は、もうゴクゴクと飲んでジョッキを空にする。
ふー--。
「おい、弱いくせに一気に飲むな」
ペシッと奏の指先でこめかみを小突かれる。
「もう、痛いな。女の子扱いしてよね」
全然、痛くないけどね。
「ハァッ、手加減してやってるだろ。女扱いなら…」
耳元に口を寄せた奏。
『女扱いして抱いたろ』
ボッと首から上が沸騰したかのように一気に茹る。
「菜生?真っ赤よ⁈」
優希さんが、目をパチパチして驚いている。
「えっ、うん…酔いが回ったの、かな?」
隣の奴は、したり顔。
なんなの?罰ゲームですか!
忘れていたのに思い出したら、隣の奏が見れない。
「臣さんって、かっこいいですね」
「突然、何言ってるんだ。酔っ払い」
隣からの声は無視する。
「彼女います?」
「…残念ながら、募集中」
「きゃあ、募集中ですって、優希さん。どうしましょう」
私は、話の方向を優希さんにターゲットを変えた。
それは、臣さんが優希さんのタイプだから…