大人の恋は複雑で…素直になるのは難しい
もう、そんな悲しい表情するぐらいなら、最初からこの人選を選ばなければいいのにと思いながら、ハンカチで優希さんの濡れた頬を拭いてあげた。
「菜生こそ、奏さんと会話してないよね」
泣きながらでも、そういうところは気が効くんですね!と心でため息と共に突っ込んで
「別に、私は奏が誰と仲良くしてても気になりませんよ。あいつの彼女でもないですし、それに、奏はこういうチャンスは逃さないですよ。どちらかをお持ち帰りするんじゃないんですかね」
ふん…想像しただけでイラッとしてくる。
「嫉妬してるように聞こえるよ」
「違います…いくら向こうから来るからって、次々と取っ替え引っ替えで節操のない奴だと呆れてるんです」
「そう?」
「そうですよ。ほら、自分のことを考えてください。その剥がれた化粧で臣さんの前に出るんですか?」
化粧を直した優希さんと戻ると、既に席替えが終わっていた。
やられた…
でも、臣さんは中央にいて、その反対隣2席は空いている。
優希さんを臣さん側に座らせ、私は隅の席に。
だけど、臣さんは優希さんに半分背を向けて笹倉さんと楽しくしている。
ムカムカしてくる。