大人の恋は複雑で…素直になるのは難しい

「菜生ちゃん、 本当に彼氏いないの?」

前の席にいる男性が、可愛らしい笑顔で聞いてきた。

この人は、石黒さんだ…確か同じ歳って言ってたな。

「いないよ。失恋したばかり」

「そ、そうなんだ。でも、こうして合コンに参加するって事は新しい出会いに期待してだよね」

前向き発言ありがとうございます…
でも、違うだなぁ。

「当分は考えてないかなぁ…今日来たのは付き添いみたいなものだから!」

「付き添い?」

「気にしないで…私が勝手についてきてるだけだから」

「でも、出会いは大事だよ。俺、菜生ちゃんに出会ったもん。運命的なもの感じてる」

グラスを持っていた手を、前のめりになった石黒さんの両手が覆う。

その後頭部をパコーンと叩く人の手にみんなの視線が集中。

「お前は、毎回、誰にでも運命感じてるのか?」

「奏さん、痛いっす。菜生ちゃん、奏さんの言う事なんて信じないでくださいね。俺、本当に運命感じてるから…助けてななせちゃん」

奏にヘッドロックされ、苦しそうに私に助けを求めて手を伸ばす石黒さん。

クスクス笑い、手を伸ばしてあげようとしたら、石黒さんはヘッドロックされたまま奏に連れ出されようとしている。

「…お前、ちょっとつきあえ」
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