大人の恋は複雑で…素直になるのは難しい
コクコク頷くと、手を離した奏は咥えていたタバコの煙に目を細め煙を吹かしていた。
「タバコを吸うんだね…」
「あぁ、たまに…イラついたらな」
へー、イラついてたんだ。
何にかは知らないけど…それよりも優希さんだ。
風の方向がこちらに流れているからか、微かに聞こえてくる会話。
『俺に無視されて、どうだった?』
えっ、あれってわざと優希さんを無視してたの?
「さすが、ドS…気にならないふりしてる優希ちゃんの表情が変わる度に、ニヤついてたもんな!泣きそうに目を潤ませた時なんて、サイコーに楽しそうだったぜ」
はあっ?
「どう言うことよ?奏、気がついてたの?」
「お前、横だったから気がつかなかっただろうが、臣がわざと笹倉さんだっけ⁈彼女と仲良くして優希ちゃんのこといじめてたんだよ」
なんだって!
「臣さん最悪。優希さんがどんな気持ちでいたか…優希さんにお見合い相手から結婚相手を探した方がいいって進言しなきゃ」
「へー、優希ちゃんお見合いするんだ」
憤慨している横で他人事のように話す奏に、ムカつく。
「そう、臣さんは結婚に興味ないんでしょ」
「まぁ、堕とすまでが楽しいって言ってような奴だからな」