王太子殿下の花嫁なんてお断りです!
それからオリヴィアを引き寄せると首元に剣を当てた。


「さあ、こいつの首が飛ばしていいのかな! 嫌ならアンスリナを明け渡してくれない?」


その狂ったような表情にオリヴィアは目を見開いて恐怖に怯えそうになるが、視界にはアーノルドが映った。

アーノルドは目が合うと僅かに笑った。


その笑顔でオリヴィアは少し落ち着けた。

絶対に大丈夫だと言われているようだった。


「それは人質のつもりか?」

「そうだね!」

「ふうん。そういえばこっちにもいるんだよな、人質」

「な、に?」


顔が強ばるリアムに、アーノルドはにっこり笑った。


「現在うちの城に滞在しているメリーアン王女。今、部屋で軟禁中なんだよね。どうする?」


目を見開いたリアムは「クソッ」と舌打ちをした。


「本当はメリーアンを俺の嫁にでも据える気だったんだろうけど、残念だったね。逆に利用させてもらうよ。さあ、リアム。妹を帰して欲しければ大人しく言うことを聞いてもらおうか」


リアムは歯ぎしりしていた。その様子をアーノルドは目を細めて見守っている。

リアムは舌打ちするとオリヴィアを突き飛ばした。


「うわ!」


しかし突き飛ばされたオリヴィアをアーノルドが抱き留めた。

先ほどまでと全然違う、とオリヴィアは思った。どこにいるより、今ここにいるときが一番心強く心地よい。


「交換条件でどう?返してやるから、うちの妹も帰してもらうよ」

「それならアンスリナの件は無かったことにしてくれる? アンスリナはうちの領土だから、売買契約は白紙」

「今回は諦めてやるよ」


そう言ってリアムは踵を返そうとした。

その時だった。


「待って!」


その後ろ姿を、オリヴィアが引き止めた。



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