宿命~フェイト~
亮と付き合い始めて2年がたつ頃。
だいぶ不倫生活に慣れた二人。
普段の生活でばれる心配はない。なんせ私はいろんな事、完璧に我慢していたから。
奥さんが夜勤で亮が仕事休みの時、最近は子供を置いて行くらしく、子守をしなければならなくなり、なかなか会えない。
店と車だけの密会。本当にたまに亮が私の部屋に来る程度。それも昼間。
香水は一緒だし、たばこもおんなじ〝クール〟に替えた。吸殻でばれる事もない。もちろん口紅はつかないように気をつけてる。完璧だ!
最近では亮も家族の話を普通にするようになった。
「女って怖いよなー
この間あいつが夜勤の時、俺の車修理出してて、樹理の車で出かけたじゃん。あの日、普段絶対っていっていいほどかけてこないくせにうちに電話したらしいんだよ。
たいした用じゃなかったらしいんだけど…
携帯にはかけてきてないんだよなー
うちにいるか確かめたのかなー?
何か直感みたいのあるのかなー?
マジでびびったよ」
「で、何てごまかしたの?」
「コンビニ行ってたって。帰りコンビニで買い物して正解だったよ。
けどその日に限って根掘り葉掘り聞いてきてよー
車ないのに歩いて行ったのか?とか。怖くない?」
私も普通に『ヤバいねー怖いねー』
なんて言って平気で話してる。
これってどうなんだろ?
いいのか?これで……。
もしや倦怠期ってやつか?
会えなすぎて冷めてきちゃったのかなー?
でもやっぱり大好きなのは変わってないんだけど……な。
亮は家族の為に車を替えていた。
セカンドCARも売ったらしい。
私達の思い出の車はもう無い。新しい車はファミリー向きのワゴン車だった。私はあまり好きではなかった。
昼間のアルバイトまで始めてしまい、ますます亮と会う時間は減っていった。
「今日、帰り少し時間とってくれる?話あるから」
久々にママに言われた。
いつになく緊張した顔をしていた。
あれ?最近ちょっと暇だからまたまた怒られちゃうのかな?なんだろー?嫌な予感がするー
やっぱり今日も暇だった。
片付けが終わって皆を帰して、ママが待っている待機ルームをノックした。
〝トントン〟
「はい、どーぞ」
緊張したけど元気に入っていった。
「お疲れ様でーす」
「チイママお疲れ様!座って!」
ママの向かい側に座って、ママが話しだすのを待った。
「どう?相変わらず亮くんのとこ、行ってる?」
「はい。……行ってますよ!」
「そっか。亮くんも頑張ってるんだね。……ところで前に一緒に飲みに行った時の話覚えてる?
亮くんの独立のきっかけを聞いたじゃない?」
げっ!あんなに酔ってて記憶あるんだ…こわっ!
「あっそんな話してましたね。私は独立前からあの店行ってたから、経営者が変わる事にあまり違和感なかったけど……
亮にチラッと相談されて、応援するって言った手前たまに顔出してたんですよ」
「そうなんだー……ところでさ。樹理もさぁ、頑張ってみない?」
は?またその話か………
「でもやっぱりここはママの店だし、私はNO.2が合ってるんですよ。」
「そう言わないで真面目に考えてみて!
実は来月で店閉めようと思ってるの」
えっ??
閉めるって、そんな急にそれは話が違ってくるよー
ちょっと待って。それは困る。
とにかく話を聞くことにした。
「完全に引退する事に決めたの。
三上もそうして欲しいっていうし、ここしばらく私も持ち出し持ち出しでこれ以上は無理だから……」
三上さんはママの彼氏。
暴力団関係ではないけど怪しげな事業をしてた。
でも最近保証人になって借金背負ったとか従業員に売上持ち逃げされて、事業もうまくいってないって聞いていた。
ママはそんな人に今のその状況で人生預けるつもりなのか?
恋は盲目って。私も少し気持ちは解るけど、経営者のくせに……
ママと三上さんの二人にがっかりした。
三上さんはママの仕事ぶりを見て、褒めまくってた。
話は上手だし、面白い。この仕事は天職だな。って。
そんなママに惚れたはずなのに、その仕事を奪うなんて………
「えっ?来月で閉めるんですか?………ママは店閉めてその後どうするんですか?」
「三上の会社の仕事を手伝う事になると思う。
実は今もうすでに取締役になってるんだよ!
それでね。この店を樹理に引き継いで欲しいと思ってるんだけど…」
………………
何度も断ってるのに……
ママの顔を改めて見た。
初めて会った時、うわっ派手!綺麗!と思った。
私は純日本的な顔だから、派手顔は羨ましかった。
ちなみに未だに水商売と思われる事は少ない。
見た目は真面目でおとなしそうらしい?から。
ママは背は小さいけど胸もお尻も大きくてボリュームたっぷり。
顔は小さいけど目や口は大きめで化粧映えする。
フィリピン系かな?
それに何といっても髪がめちゃくちゃ綺麗だった。
いまだかつてママ以上に艶々のキューティクルの持ち主を見たことがない。
私より一回り以上年上なのに明るくはつらつとしていた。
だけど、病気したりしたせいか目の前にいるママは、一気に歳をとった感じ……
シワも目立つし元気がない。
「この店そっくりそのまま250万で買ってくれない?」
「えっ??ママ私にそんなお金なんか無いの知ってるじゃないですかー?」
「だから亮くんと同じパターンだよ。月10万位ずつの分割でいいから。同じ境遇だもん亮くんと励ましあって頑張ればいいじゃない?
あなたが断るなら普通に売りに出すことになるんだけど……
300万で買ってもいいっていう人もいるんだけど、
私は他人に売るよりもこのまま樹理に引き継いで貰いたい!
この店〝ブラックレイン〟を無くしたくないんだ!
この店居ぬきで250万は安いと思うよ!
他人に売るなら中の物はいっさい付けないで300万で売るんだから。
それに、お客さんもそのまま付いてくるんだよ!
とにかく本気で考えてみて!」
今までは自分はオーナーとして残るから、ママをやって欲しいと言っていた。
いわゆる雇われママになって欲しいという話だったのに、いきなり経営者って。
あの時の亮の独立の話でママはそんなこと思いついたんだ。きっとそうだ。
なんてことだ。
それにしてもそんなの無理に決まってる!ママで継続困難なこの店を私が出来るわけないよ。
とりあえず考えてみるという事にして浮かない気分で店をでた。
〝夢は100人に話すと叶う〟そう聞いたことがある。
例えば出版関係の仕事をしたいと思う人が1人のAさんにそれを熱弁する。
それを聞いたAさんが本屋さんの知り合いBさんにたまたまその話をしたら、Bさんは出版社の知り合いCさんに話を聞いてくれるかもしれない。
Cさんが他の出版社を紹介してくれるかもしれない。
例としては大雑把だけど、1人のひとに本気で話をすると、2人、3人に広まっていく。
このパターンを100人にしたら、確率は高くなる。その内1つでもうまくいけば夢は叶う。
そういう理屈。
確かに心に秘めていても何もならないし、行動を起こすにも何をしていいかわからなかったりする。
そんな時、アドバイスだけでも有り難いはずだし、
悲しいことだけど世の中コネがないとなれない職業もあったりする。
私の夢は飲食店経営ではない。
でも今はとにかく生きていく為の仕事が必要だ。考えなければ来月には職をなくしてしまう。
私はまず私の事を応援してくれてる人、物事を冷静に見れる人、いろんな人に相談してみる事にした。
だいぶ不倫生活に慣れた二人。
普段の生活でばれる心配はない。なんせ私はいろんな事、完璧に我慢していたから。
奥さんが夜勤で亮が仕事休みの時、最近は子供を置いて行くらしく、子守をしなければならなくなり、なかなか会えない。
店と車だけの密会。本当にたまに亮が私の部屋に来る程度。それも昼間。
香水は一緒だし、たばこもおんなじ〝クール〟に替えた。吸殻でばれる事もない。もちろん口紅はつかないように気をつけてる。完璧だ!
最近では亮も家族の話を普通にするようになった。
「女って怖いよなー
この間あいつが夜勤の時、俺の車修理出してて、樹理の車で出かけたじゃん。あの日、普段絶対っていっていいほどかけてこないくせにうちに電話したらしいんだよ。
たいした用じゃなかったらしいんだけど…
携帯にはかけてきてないんだよなー
うちにいるか確かめたのかなー?
何か直感みたいのあるのかなー?
マジでびびったよ」
「で、何てごまかしたの?」
「コンビニ行ってたって。帰りコンビニで買い物して正解だったよ。
けどその日に限って根掘り葉掘り聞いてきてよー
車ないのに歩いて行ったのか?とか。怖くない?」
私も普通に『ヤバいねー怖いねー』
なんて言って平気で話してる。
これってどうなんだろ?
いいのか?これで……。
もしや倦怠期ってやつか?
会えなすぎて冷めてきちゃったのかなー?
でもやっぱり大好きなのは変わってないんだけど……な。
亮は家族の為に車を替えていた。
セカンドCARも売ったらしい。
私達の思い出の車はもう無い。新しい車はファミリー向きのワゴン車だった。私はあまり好きではなかった。
昼間のアルバイトまで始めてしまい、ますます亮と会う時間は減っていった。
「今日、帰り少し時間とってくれる?話あるから」
久々にママに言われた。
いつになく緊張した顔をしていた。
あれ?最近ちょっと暇だからまたまた怒られちゃうのかな?なんだろー?嫌な予感がするー
やっぱり今日も暇だった。
片付けが終わって皆を帰して、ママが待っている待機ルームをノックした。
〝トントン〟
「はい、どーぞ」
緊張したけど元気に入っていった。
「お疲れ様でーす」
「チイママお疲れ様!座って!」
ママの向かい側に座って、ママが話しだすのを待った。
「どう?相変わらず亮くんのとこ、行ってる?」
「はい。……行ってますよ!」
「そっか。亮くんも頑張ってるんだね。……ところで前に一緒に飲みに行った時の話覚えてる?
亮くんの独立のきっかけを聞いたじゃない?」
げっ!あんなに酔ってて記憶あるんだ…こわっ!
「あっそんな話してましたね。私は独立前からあの店行ってたから、経営者が変わる事にあまり違和感なかったけど……
亮にチラッと相談されて、応援するって言った手前たまに顔出してたんですよ」
「そうなんだー……ところでさ。樹理もさぁ、頑張ってみない?」
は?またその話か………
「でもやっぱりここはママの店だし、私はNO.2が合ってるんですよ。」
「そう言わないで真面目に考えてみて!
実は来月で店閉めようと思ってるの」
えっ??
閉めるって、そんな急にそれは話が違ってくるよー
ちょっと待って。それは困る。
とにかく話を聞くことにした。
「完全に引退する事に決めたの。
三上もそうして欲しいっていうし、ここしばらく私も持ち出し持ち出しでこれ以上は無理だから……」
三上さんはママの彼氏。
暴力団関係ではないけど怪しげな事業をしてた。
でも最近保証人になって借金背負ったとか従業員に売上持ち逃げされて、事業もうまくいってないって聞いていた。
ママはそんな人に今のその状況で人生預けるつもりなのか?
恋は盲目って。私も少し気持ちは解るけど、経営者のくせに……
ママと三上さんの二人にがっかりした。
三上さんはママの仕事ぶりを見て、褒めまくってた。
話は上手だし、面白い。この仕事は天職だな。って。
そんなママに惚れたはずなのに、その仕事を奪うなんて………
「えっ?来月で閉めるんですか?………ママは店閉めてその後どうするんですか?」
「三上の会社の仕事を手伝う事になると思う。
実は今もうすでに取締役になってるんだよ!
それでね。この店を樹理に引き継いで欲しいと思ってるんだけど…」
………………
何度も断ってるのに……
ママの顔を改めて見た。
初めて会った時、うわっ派手!綺麗!と思った。
私は純日本的な顔だから、派手顔は羨ましかった。
ちなみに未だに水商売と思われる事は少ない。
見た目は真面目でおとなしそうらしい?から。
ママは背は小さいけど胸もお尻も大きくてボリュームたっぷり。
顔は小さいけど目や口は大きめで化粧映えする。
フィリピン系かな?
それに何といっても髪がめちゃくちゃ綺麗だった。
いまだかつてママ以上に艶々のキューティクルの持ち主を見たことがない。
私より一回り以上年上なのに明るくはつらつとしていた。
だけど、病気したりしたせいか目の前にいるママは、一気に歳をとった感じ……
シワも目立つし元気がない。
「この店そっくりそのまま250万で買ってくれない?」
「えっ??ママ私にそんなお金なんか無いの知ってるじゃないですかー?」
「だから亮くんと同じパターンだよ。月10万位ずつの分割でいいから。同じ境遇だもん亮くんと励ましあって頑張ればいいじゃない?
あなたが断るなら普通に売りに出すことになるんだけど……
300万で買ってもいいっていう人もいるんだけど、
私は他人に売るよりもこのまま樹理に引き継いで貰いたい!
この店〝ブラックレイン〟を無くしたくないんだ!
この店居ぬきで250万は安いと思うよ!
他人に売るなら中の物はいっさい付けないで300万で売るんだから。
それに、お客さんもそのまま付いてくるんだよ!
とにかく本気で考えてみて!」
今までは自分はオーナーとして残るから、ママをやって欲しいと言っていた。
いわゆる雇われママになって欲しいという話だったのに、いきなり経営者って。
あの時の亮の独立の話でママはそんなこと思いついたんだ。きっとそうだ。
なんてことだ。
それにしてもそんなの無理に決まってる!ママで継続困難なこの店を私が出来るわけないよ。
とりあえず考えてみるという事にして浮かない気分で店をでた。
〝夢は100人に話すと叶う〟そう聞いたことがある。
例えば出版関係の仕事をしたいと思う人が1人のAさんにそれを熱弁する。
それを聞いたAさんが本屋さんの知り合いBさんにたまたまその話をしたら、Bさんは出版社の知り合いCさんに話を聞いてくれるかもしれない。
Cさんが他の出版社を紹介してくれるかもしれない。
例としては大雑把だけど、1人のひとに本気で話をすると、2人、3人に広まっていく。
このパターンを100人にしたら、確率は高くなる。その内1つでもうまくいけば夢は叶う。
そういう理屈。
確かに心に秘めていても何もならないし、行動を起こすにも何をしていいかわからなかったりする。
そんな時、アドバイスだけでも有り難いはずだし、
悲しいことだけど世の中コネがないとなれない職業もあったりする。
私の夢は飲食店経営ではない。
でも今はとにかく生きていく為の仕事が必要だ。考えなければ来月には職をなくしてしまう。
私はまず私の事を応援してくれてる人、物事を冷静に見れる人、いろんな人に相談してみる事にした。