宿命~フェイト~
帰りの車の中はお互い無言。
私は何を言っていいかわからず、窓の外を眺めているだけだった。
家に着くと、亮がやっと口を開いた。
「少し車停めて話そ。……
……翔ちゃんから聞いたの?」
「うん。」
「でも、晃司の妹の事なんて翔ちゃん知らないよな?」
「それは、私の直感」
「ふぅー
女ってすごいな…」
「何度も言おうとしたんだ。でも言いだせなかった。騙そうとした訳じゃないんだ。……ごめん。」
確かに何かを言いかけて、言葉を飲み込んでしまった事が何度かあった。
そんな時、なに?って聞いてもなんでもないって言って再び話そうとする事はなかった。
店に飲みに来た時、何かの話の流れで、『人の口って怖いよねー?俺、樹理にも話せない事あるよ』なんて言ったのを、私は例えばお客さんに『言わないでね』って言われて聞いた話とかそんな事を言ってるんだと勝手に思い込んでいた。
『言えない事で何か悩んでるの?』
『悩んでるよー』
『でも言えないなら仕方ないよね…』
亮は困った顔をしていたけどそれ以上突っ込めなかった。
男が口が軽いなんて最低だと思うし……
私は亮に隠してる事はない。何でも話せる。
内緒の話でも亮にだけは話してしまう。
亮が口固いのを知ってるから、信じてたから。
口が固い亮を私は男らしいと思っていた。亮はまだ私の事を信じきっていなかったという事になる。
悲しいけどそれは責められなかった。
それから朝までいろんな話をした。
最初はやっぱり営業だったからもちろんプライベートの真実なんて話す必要もないのは、私も同業だからよく解る。
出会いはお客さんと接客のプロなんだから…
亮の話だと私がピタッと店に来なくなった時、気になって仕方なくて、何度も電話しようとしたけど本気になりそうで怖くて我慢した。だけど3日で限界だったそうだ。
私の作戦は大成功だったのだ。
お客さんとしてつなぎ止めたかったのもあるし、気になる存在になっていたし、悩んだそうだ。
すでに自分が結婚して、子供がいる事を言ってしまうと私が店に来なくなってしまう。店も困るし、自分もそんなの嫌だ。
『結果として樹理を傷つけてしまう事なんて、考えたら解るのに、どうしても言えなかった』と亮はかすれた声で言った。
そして私が彼女がいてもそれでも2番目の彼女でもいいなんていうから余計言えなくなってずるずるきてしまったと。
話を聞いていた私は意外に冷静だった。
同業者として理解出来てしまうから。
それにどうせ2号である私には同棲してる彼女も妻もあまり変わりはないのだ。
ただ騙されていた事と子供の事は大きなショックだった。
私が恋に落ちたあの日、亮はいつもと様子が違った。何となく影があるような感じで悲しそうな、辛そうな顔をしてた。そのまさしくあの日、妊娠した奥さんと結婚する事に決ったそうだ。
確かにそんな人生の重大事、不安な顔をするのも理解出来なくも無い。
よりによってそんな日に恋に落ちるなんて。なんて不運な女なんだろうか。
亮は相手が収入のいいナースだからといって不安定な水商売を続けながらの結婚生活に大きな不安を感じていたらしく、幸せと実感した事はないと言った。
子供はかわいいけれど…と。
だけどずるい!こんなに好きになってしまってから、私にどうしろというのか。
今更別れるなんて出来ないよー
亮の本心を聞いて私はまたまた開き直ってしまう。
「わかった。でももう嘘はつかないで!」
「亮は今のままでいいの?私と別れたい?」
「樹理が辛いなら仕方がないけど別れたくないよ」
今日はしおらしい亮。
「わかった。でももうわかってしまったんだから、気を使って隠すとか無しね!何でも話してね!
私はやっぱりすごく亮の事好きだから。
もう心は決まったから。開き直っちゃうから!」
亮がわかった!といいながら抱きついてきた。
ニコニコ笑っている。
かわいい!
その日は何度も何度もキスをして別れた。
私達二人は濃厚なディープキスはあまり好きではない。チュッチュッチュッチュッってじゃれてるのが楽しい。
強烈な一日だったはずなのに嫌な事は忘れてどっかに吹っ飛んでいた。
ルンルンで帰宅した。
バカ女だ。
私は何を言っていいかわからず、窓の外を眺めているだけだった。
家に着くと、亮がやっと口を開いた。
「少し車停めて話そ。……
……翔ちゃんから聞いたの?」
「うん。」
「でも、晃司の妹の事なんて翔ちゃん知らないよな?」
「それは、私の直感」
「ふぅー
女ってすごいな…」
「何度も言おうとしたんだ。でも言いだせなかった。騙そうとした訳じゃないんだ。……ごめん。」
確かに何かを言いかけて、言葉を飲み込んでしまった事が何度かあった。
そんな時、なに?って聞いてもなんでもないって言って再び話そうとする事はなかった。
店に飲みに来た時、何かの話の流れで、『人の口って怖いよねー?俺、樹理にも話せない事あるよ』なんて言ったのを、私は例えばお客さんに『言わないでね』って言われて聞いた話とかそんな事を言ってるんだと勝手に思い込んでいた。
『言えない事で何か悩んでるの?』
『悩んでるよー』
『でも言えないなら仕方ないよね…』
亮は困った顔をしていたけどそれ以上突っ込めなかった。
男が口が軽いなんて最低だと思うし……
私は亮に隠してる事はない。何でも話せる。
内緒の話でも亮にだけは話してしまう。
亮が口固いのを知ってるから、信じてたから。
口が固い亮を私は男らしいと思っていた。亮はまだ私の事を信じきっていなかったという事になる。
悲しいけどそれは責められなかった。
それから朝までいろんな話をした。
最初はやっぱり営業だったからもちろんプライベートの真実なんて話す必要もないのは、私も同業だからよく解る。
出会いはお客さんと接客のプロなんだから…
亮の話だと私がピタッと店に来なくなった時、気になって仕方なくて、何度も電話しようとしたけど本気になりそうで怖くて我慢した。だけど3日で限界だったそうだ。
私の作戦は大成功だったのだ。
お客さんとしてつなぎ止めたかったのもあるし、気になる存在になっていたし、悩んだそうだ。
すでに自分が結婚して、子供がいる事を言ってしまうと私が店に来なくなってしまう。店も困るし、自分もそんなの嫌だ。
『結果として樹理を傷つけてしまう事なんて、考えたら解るのに、どうしても言えなかった』と亮はかすれた声で言った。
そして私が彼女がいてもそれでも2番目の彼女でもいいなんていうから余計言えなくなってずるずるきてしまったと。
話を聞いていた私は意外に冷静だった。
同業者として理解出来てしまうから。
それにどうせ2号である私には同棲してる彼女も妻もあまり変わりはないのだ。
ただ騙されていた事と子供の事は大きなショックだった。
私が恋に落ちたあの日、亮はいつもと様子が違った。何となく影があるような感じで悲しそうな、辛そうな顔をしてた。そのまさしくあの日、妊娠した奥さんと結婚する事に決ったそうだ。
確かにそんな人生の重大事、不安な顔をするのも理解出来なくも無い。
よりによってそんな日に恋に落ちるなんて。なんて不運な女なんだろうか。
亮は相手が収入のいいナースだからといって不安定な水商売を続けながらの結婚生活に大きな不安を感じていたらしく、幸せと実感した事はないと言った。
子供はかわいいけれど…と。
だけどずるい!こんなに好きになってしまってから、私にどうしろというのか。
今更別れるなんて出来ないよー
亮の本心を聞いて私はまたまた開き直ってしまう。
「わかった。でももう嘘はつかないで!」
「亮は今のままでいいの?私と別れたい?」
「樹理が辛いなら仕方がないけど別れたくないよ」
今日はしおらしい亮。
「わかった。でももうわかってしまったんだから、気を使って隠すとか無しね!何でも話してね!
私はやっぱりすごく亮の事好きだから。
もう心は決まったから。開き直っちゃうから!」
亮がわかった!といいながら抱きついてきた。
ニコニコ笑っている。
かわいい!
その日は何度も何度もキスをして別れた。
私達二人は濃厚なディープキスはあまり好きではない。チュッチュッチュッチュッってじゃれてるのが楽しい。
強烈な一日だったはずなのに嫌な事は忘れてどっかに吹っ飛んでいた。
ルンルンで帰宅した。
バカ女だ。