【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―



「何か、爛れていた、とか……部屋で亡くなっていたそうなんだけど、香がもうもうと炊かれていたらしいわ」


「爛れて?香……」


どこから、そんな情報が出たのか。


玉林さん達、二人には爛れた傷はない。


そのことを含めて、決して、二人はあの毒ではないと確信したばっかりだったのに。


「……お二人はどこで?」


「二人じゃないわ。数人が……栄貴妃様は否定しているけれど、このままじゃ……」


栄貴妃は身分が高いと言うだけで、決して、皇帝の寵愛を得ているわけでもなく、どちらかと言えば、彼女の兄が皇帝に重用されている感じだ。


彼女の兄を蹴落としたいものが、彼女を嵌めたか。


いや、でも、彼女を下手人として定めるには聊か、不安定すぎるとも思う。


彼女を消したからと言って、兄までが消されるとは限らないからだ。


「話を詳しく、聞きたいのですが」


栄貴妃様は、とても親切な方だった。


翠蓮にもとても優しくしてくれて、後宮がそういう場所だとは知っているけれど、黎祥には無闇に断罪して欲しくない。


「翠玉、分かるの?」


「……ハッキリとは、言えませんが。でも、覚えはあります」


皮膚の爛れてしまう劇薬―……。


これはもう、完全な悪意がないと出来ないもので。


栄貴妃にそれを渡さなかったのは、栄貴妃がこの後宮から去ったとしても、また、栄家は新しい娘を入宮させると踏んだからだろう。


だから、殺人の罪をかぶせるのだ。


その罪が重ければ重いほど、栄貴妃だけではなく……栄家の族滅に繋がるから。


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