【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―
気がつけば、口をついて出た名前。
「え……?」
驚く伯怜さんに、翠蓮は笑いかけて。
「貴方が私に名前を願う意味はわかりませんが……私はあなたに、この名前をあげたい」
ふっと、頭に浮かんだ名前。
これ以外ないって、なんか思ったの。
「飛龍……?」
「あっ、いやなら、全然……」
「良いっ!」
目をキラキラさせて、喜んでくれる伯怜さん。
「伯怜って名前、もう要らなーい!今度から、飛龍って呼んで!これで、もう、僕は君のものだから!」
「へ?」
「嬉しいなぁ。"名前”なんて、何年ぶりだろう?呼んでみて!」
「えっと……飛龍?」
「うん!もし、何かあったら……助けて欲しかったら、僕の名前を、飛龍って呼んで!すぐに、駆けつける!!」
小さな子供みたいにはしゃぐその姿を見ていると、彼に感じていたはずの疑問がどんどん薄れてく。
「あ、あと!」
ずいっ、と、差し出された袋いっぱいに入った、キラキラとした真っ白で艶やかな、真珠のような玉。
「これは、なに?」
なんですか?と、問おうとしたのに、口が勝手に変換する。
「龍の涙!」
「涙?」
「この国の守護龍の涙、『永華珠(エイカジュ)』だよ。是非、使って」
軽やかな口調だけど、どこか、儀式のように厳かで。
「何か困ったことがあったら、この玉に願って。僕を呼んで」
「……」
「君は抱え込み過ぎる。お人良し過ぎる。きっと、それはいつか、君を争いの渦中へと連れていく」
強い、風が吹く。
目を閉じる。
柔らかな何かが、額に触れる。