【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―
「……飛龍」
次に目を開けた時、彼は姿を消していた。
そんな中で耳に残った、言葉。
『また、会いましょう。愛しき人よ』
……飛龍のことが気になりながらも、悩んでいる時間がない翠蓮は貰った袋を片手に、早足で、碧寿宮に急ぐ。
―この時、どうして自分はこんな行動を取れたのか―……人ならざるものを見たあとで、どうして、こんな風に行動できたのか、後の翠蓮には説明てできなかった。
「―っ、ふざけないでよ!!」
急いで向かった碧寿宮の内院の、人がめったに近寄らないところから、誰かの泣き叫ぶ声。
「雪麗、待て。話を聞いてくれ」
「嫌よ!こんなに心配かけといて……馬鹿っ、」
「……すまない」
宦官の格好をした男の人の胸を殴りつけながら、泣く女。
男の右目には、眼帯。
(隻眼か……失明でもしたのかな)
覗くのは悪いと思うが、ここを通らなければ、栄貴妃の元には行けなくて。
そっと、通り過ぎようと思った、その時。
「慧秀(ケイシュウ)は、いっつも、そう……!」
……ん?
「すまない」
「謝れば、済む話じゃないの!どうして、こんな危険を冒して……馬鹿よ。本当っ、馬鹿慧秀……」
…………んん?
進む足も、止まる。
「悪かった。もう二度と、一人にはしないから―……」
「何言ってるの、ここは後宮よ?バレたら、私もあなたも一溜りもない……それどころか、一族郎党、処刑台行き」
「なら、身代わりを立てて……」
「私は貴妃なのよ?そんなことが通用するとお思いになって?」
その言葉を聞いた瞬間、翠蓮は油断した。