【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―
すると、二人の兄の顔は引き攣って。
「なんで、お前がここに……っ」
「皇帝の妃になったのか!?」
とか、言い出すし。
「違うわ。この格好が見えないの?」
薬師に定められた服を見せびらかすと、
「……お前、まさか、後宮の薬師に!?」
「そうだけど」
「じゃあ、今、後宮内で噂の順翠玉って―……」
「私ですけど、何か?」
兄二人は、絶句。
そんなふたりを無視して、翠蓮は栄貴妃の元に向かう。
「これから、秋遠様を始めとした方々の治療に当たりますので、栄貴妃様にお仕えするのが難しくなりますが、食事の際は駆けつけますので、決して、口になさらぬよう。そして、香にまでお気をつけを」
「香?」
「はい。誰も気づかないような体に悪影響を及ぼす香木が、この世には万とございます。決して、己の判断で使わぬようにして下さいませ。今は大変危険です。そうですね……そこにいる馬鹿たちを使ってくださっても構いませんので、灯蘭様もお気をつけください」
「香ね。分かったわ。食べるものにも、気をつける。不安だったら、祐鳳(ユウホウ)を頼るの?」
「はい。そうしてください。少なくとも、毒物の方の知識は詳しいはずですから」
小さい頃、よく、みんなで探していた薬草。
貧乏で、苦しかった生活の中で、翠蓮たちにとっては薬草は上から与えられた、慈悲のひとつだった。