【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―
(貴妃って言ったか!?今!!)
手に持っていた瓶を、落としてしまったのだ。
「誰っ!?」「……」
幸い、下は芝生だったから瓶は割れなかったけれど、二人にはバレてしまった。
大人しく、
「ごめんなさい……」
と、出て行って、慧秀という男の顔をじっと見る。
女官の格好をした栄貴妃は慌てて。
「違うのよ、翠玉。これはちょっとした遊びで―……」
いつもの優しい、栄貴妃様だ。
どうして泣いていたのか、とか、
横の男のこととか、
色々聞きたいのに。
「栄貴妃様」
「な、なあに?」
「そこの横にいる男、殴っていいですか」
「えっ?」
「密通とか、そんなのは報告するつもりないんで。殴らせてください。お願いします」
とりあえず、まぁ、怒りが、収まらない。
「え、ええ?」
戸惑う栄貴妃の横を通り過ぎて、その男の頬をぶん殴る。
大人しく殴られてくれたその男は座り込むと、
「……久しぶり、翠蓮」
と、殴られた頬を押さえながら、右手をあげる。
「お久しぶり。お兄様」
翠蓮がそうニッコリと笑うと、
「お兄様!?」
と、栄貴妃が声を上げる。
「―ちょっ、何の騒ぎ!?」
その声を聞きつけてか、駆けつけてきたのは、嵐雪さんの叔母様・順徳太妃と先々帝の娘であり、黎祥の腹違いの妹に当たる灯蘭(トウラン)様と―……
「ゲッ」
またまた、聞き覚えのある声が。
「あら、もう1人の兄様もいらっしゃる」
フフフッ、と、翠蓮は笑う。