【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―
「後宮において、証拠は必要じゃ。まぁ、証拠などあってもなくても、疑わしきは罰せよ、の後宮において、無駄かもしれぬが」
そう言った妖々の瞳はどこか遠く、
見上げられた空は……寂しそうで。
「……飛燕(ヒエン)」
自然に、口から漏れ出た名前。
「え?」
不思議そうな妖々に、翠蓮は微笑した。
「あなたの名前。ずっと考えていたのだけど……今、ふっと頭に思いついたわ。飛燕……うん、我ながら良い名前だと思うわ。麗々は、飛雪(ヒセツ)でどう?」
「「……」」
二人は無言で、翠蓮を見上げる。
「……翠蓮様?彼らは何者なんですか」
気に入らなかったかな、と、心配していると、傍によってきて囁いた嵐雪さん。
「それが……私もよくわからなくて。色々とおかしいところがあるように感じますが……彼らが、ただ人でないことは確かです」
ただの人間が、いきなり消えたりするものか。
術を使ったりすれば、可能なのかもしれないが……そこに"何事も無かった”かのように、人を消すことは容易くない。