【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―
「そうじゃな。人の命は、取り返せない……じゃが、儀式の日までの時間はないぞ」
もう、その道しかないのだ、と、飛燕は言う。
「中に紛れ込んでみろ?意外な事実が、見えてくる」
「……私は、多くの人に顔が知れ渡っている。そんな私が入宮すると、いろんな罪に問われて……」
「布で、顔を隠しておけ。そして、なるべく、部屋から出なければ良い」
「そんなので、どうやって事件を調べろって……っ!」
段々、感情的になる。
すると、飛燕は
「手足がある」
と、言った。
「……手足?」
「そうじゃ。そなたが動けば、視線が集まるのは避けられん。じゃが、妃になってみろ。手足ができる。裏切られるかもしれんが、そこは慎重になれば良い話」
その話に頷いたのは、灯蘭様で。
「なるほど……宦官とかを使うのね?」
「そうじゃ。察しがええの」
「伊達に、生まれてからずっと後宮で暮らしてませんよ」
フフッ、と、灯蘭様は笑う。
確かに、彼女は公主だから。
いろんな事件に巻き込まれてきていて、今回の事件だって、よくある日常の1ページの話。
どこの誰がどんな死に方をしたかなんて、身内でなければ、誰の記憶にも止まらない。
後宮は、人を二度殺すところだ。
この後宮は、女の戦場だ。