【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―
固まっていると、どこからか馬を連れてきた祐鳳兄様が、
「よし!良い心づもりだ、皇女様!」
と、言って、麟麗様の肩を叩いた。
「あ、色々と教えてくれます?あと、私のことは麟麗で構いません。もう、皇女はやめたので」
それに、顔を輝かせた麟麗様は。
「私、馬に乗れるようになりたいのです。他にも、色々としてみたいことがあって!」
「おーよしよし。頭を使うことじゃなかったら、俺が教えてやる」
「本当ですか!?」
少し興奮気味で、兄様に齧り付く。
兄様も兄様で乗り気だし……その光景を呆然と見ていると、
「翠蓮」
と、慧秀兄様が横に立って、微笑んだ。
「彼女は、皇女じゃないよ。もう」
「……」
「彼女のことを思うのなら、先帝の呪いから、ようやく離れられたんだと思ってあげなさい。これからは下町で、変わらず生きていく彼女を、翠蓮は応援してあげないと」
そうか。
交わることのなかった弟妹が変わらず生きる城を見上げて、麟麗様はここで、この先の命を燃やし続ける。
生きる幸せを見い出して、自らの幸せを素直に追い求めて。
これから先、自由に生きていくんだ。
しがらみなどない、この下町で。