【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―
先帝の暴政の中、民は神への希望で生きていた。
だから、黎祥が即位した時に、とても祝われたのだ。
―……龍神様の裁きが下りたのだ、と。
黎祥はそんなに特別な理由はなく、ただ、亡き母の言葉を守っていただけなのに。
「お陰様で、先々帝は忘れなかったよ。忘れられるはずもない。先々帝の治世において、唯一の汚点じゃったんだから……それが、勇成の存在じゃ」
「汚点……」
「でもの、一番の汚点は妾のことじゃ。祥星様は妾を皇后にしたから……あんなことになった」
自らの膝の上で、拳を握る皇太后。
震えるその手と、声は……自分の罪に、怯える人だ。
「愛されぬのなんて、後宮においては常じゃ。じゃが、それでは勇成が哀れじゃった。生まれ落ちる場など、望めるものでもないのに、そなたは寵妃の元に生まれ、勇成はただの妃の元に……それで、父に愛されぬのは不憫であろう?」
だから、勇成を息子にしたのだと、皇太后は言った。
(感情で、行動してしまったということか……それが、皇太后の自覚する、恥ずべき罪)
「妾は自らの産んだ皇子と差をつけず、愛そうと努力はした。じゃが、妾の子供という肩書きの元、再度、皇太子を名乗ったあの子は……子供らしさもなく、愛妃に溺れて……罪のない子を、また、多く生み出してしまった……っ!!」
―……皇太后は、ありがとう、と、言った。
黎祥が、先帝の子供を殺さなかったことを……感謝していると言った。
罪のない子供の命を奪わなかった黎祥に―……。