【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―
「幼くして、祥星様に嫁いだ妾は分かっていなかった。皇后という身分の重さを、自分の、言葉の重さを―……っ」
顔を覆って、彼女は俯く。
いつも冷静で、冷たい感じすらする皇太后がこんなに取り乱しているのは珍しいことで。
「湖烏姫を追放した。彩蝶とそなたを逃した。反対する祥星様の言葉も聞かず、勇成を我が子のように慈しんだ結果―……祥星様は病に倒れた。そして、妾の知らぬところで―……っ!先帝の第一皇女などの行方もわかってない!妾の一言が、全てを壊した!そなたの母を殺した!友人を、死に追い込んだ!!息子のように思っているそなたに、人殺しをさせた!すまぬっ……すまぬ、許しておくりゃれ……」
泣き出した皇太后は、黎祥のことを見ようともせず。
「全てを失ったあと……彩蝶が死に、湖烏姫はそなたに殺され、祥星様も皇帝の座を追われて、勇成に命を狙われた他の皇子を……息子達を下町へと逃がし、暴政により、民が死に絶える中……妾は、そなたと彩蝶が住んでいた恵鈴宮で、ひとつの手紙を見つけた……」
「……」
顔を上げることの出来ない皇太后の代わりに、侍女が差し出してきたのは年月が経ち、色褪せたもの。
短文が繰り返しに書いてあり、恐らく、どこかの席でこっそりと交わしたものだったように思われた。
内容は……