【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―



―彩蝶、黎祥に譲位をしたいと、余は考えておる。その為に、翠蘭と話をしたいのだ。三人で……また、あの日のように呑み合って。お前はどう思う?


―私は皇帝の母になりたいなどと望んでいないし、皇后にもなりたいと思ってません。私が皇后となれば、翠蘭はどうなるのですか。大体、黎祥が皇帝になるのはどうかと思います。皇太子殿下もいらっしゃるし、その妃殿下もいるのに……陛下は、本当に変なことをおっしゃいますね。


―そうは言うが、この国の未来を憂いているのだ。父の代で壊れた世を、今、崩したくない。それを守れるのは、黎祥しかいないと思う。


―翠蘭の子供……第五皇子でもいいではありませんか。どうして、黎祥なのですか?上に、五人の兄もいるのに……。


―余は、彩蝶がいい。翠蘭と彩蝶に後宮を、この国を守って行って欲しいと願っている。


―そういうことを言っても、そうなれば、どうせ守るのは黎祥と翠蘭になって、私に活躍できる場はなくなりますもの。何より、私は黎祥が幸せになれれば―……


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