【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―
「どういうことですか?怜世さん」
翠蓮が確認のために振り向くと、首をかしげて。
「必要なものは、こちらで揃えると言いましたよね?」
と、返されてしまった。
言った!言ったけど……っ!!
「侍女をつけられるのは、妃になるのだから、仕方ないとして―……李家と趙家の御息女なんて……」
いくらなんでも、非常識すぎる。
名家中の名家だよ?
例え、先帝の時代に少し傾いたと言っても……すぐ立て直せるほどの、家柄だ。
結凛が趙家に嫁ぎ、後宮に宮仕えしてから、知ったことだけど……結凛の家にご飯を食べに通っていた練おじさんや、趙おじさんは、かなりすごい人だったということで。
「寵姫には、的確な人材かと」
「寵姫って!」
事情を知っているくせに!
後宮に入って、黎祥が翠蓮を多く召すというのは、それらすべて、黒幕を釣るための餌だ。
そこに深い意図はないし、燻る恋で、皇帝である黎祥を愛そうとは思わない。
それどころか、夜伽以外では距離を置くつもりだ。
部屋に閉じこもって、薬の研究を続けるつもりだ。
だって、愛したところで辛い未来になることは予想できているし、きっと、皇帝の黎祥でも……近づけば近づくほど、好きになってしまうから。