【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―
「―流雲の言う通りじゃ。臥せるほどのことではない。妾の侍女を舐めるな。毒など、少しも口にしておらぬ」
第二皇子、黎祥の兄である流雲に首元に小刀を押し当てられた宦官は、真っ青になった。
(馬鹿が……喧嘩売ってはならない人に、喧嘩売って)
流雲兄上の怖さは、黎祥を上回る。
彼はずっと、好機を狙っていたんだ。
今、この瞬間を押さえるつもりか、否か。
「計画に、穴がありすぎだ。おかげで、僕は君を利用して、とあることを成せるよ。ねぇ、君は本当に、犯人の刺客なの?皇太后の侍女を捕らえたまでは良かったけどね……僕の目は誤魔化せないから」
流雲兄上は宦官の首に手刀を入れると、意識を失った宦官を床に放り捨てて。
「……けど、君にはそんな価値もないね」
と、小刀も、床に落として。
「……報告を」
すると、気軽なノリで流雲兄上は。
「雄星が毒に臥せっているよ。けれども、幻芳珠ではない。そして、どうやら、内楽堂の裏で遺体が発見されたようだ。身元確認を進めているが、誰かは分からないほどに、殴られていた。いや、爛れているのか……?ともかく、悪化してきたから、そろそろ証拠を本腰的に揃えようと言いたいけど……残念ながら、今、女狐は臥せっているんだ」
と、肩を落とす。
「少し前の夜、何者かに全身を切られてね。大したことは無いけど……」
全身を切られていて、大したことないのか?
本当、彼の感覚には驚かされることばかり。