【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―



「今、一番問題なのは……灯蘭が壊れた」


「ゆう「っ……!?」…………」


『祐鳳、様子を見てこい』と、黎祥が名前を発する前に、通り抜けた一陣の風。


それを眺めた後、流雲兄上は何事も無かったかのように、


「…………何かを見たらしい。数日前の夜」


と、話し出した。


相変わらず、何者にも揺さぶられない人だと感心しながらも、


「それが何か、兄上はわかるか」


鋭い目を向けると、


「……………………………………だよ」


―……信じられない名前と、今の大体の状況を教えてくれて。


「とりあえず、翠玉の元へ行こう」


これ以上は言えないというように、黎祥の顔を見てきた。


この兄はどこまで知っているのだろう。


黎祥と、翠蓮の関係も把握済みなのか。


嵐雪の方を見ると、固い顔のまま。


「―黎祥、」


兄上は優しく笑うばかりで、本心は見えなかった。


< 438 / 960 >

この作品をシェア

pagetop