【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―
「今、一番問題なのは……灯蘭が壊れた」
「ゆう「っ……!?」…………」
『祐鳳、様子を見てこい』と、黎祥が名前を発する前に、通り抜けた一陣の風。
それを眺めた後、流雲兄上は何事も無かったかのように、
「…………何かを見たらしい。数日前の夜」
と、話し出した。
相変わらず、何者にも揺さぶられない人だと感心しながらも、
「それが何か、兄上はわかるか」
鋭い目を向けると、
「……………………………………だよ」
―……信じられない名前と、今の大体の状況を教えてくれて。
「とりあえず、翠玉の元へ行こう」
これ以上は言えないというように、黎祥の顔を見てきた。
この兄はどこまで知っているのだろう。
黎祥と、翠蓮の関係も把握済みなのか。
嵐雪の方を見ると、固い顔のまま。
「―黎祥、」
兄上は優しく笑うばかりで、本心は見えなかった。