【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―
「そっちをもっと、縛ってくださいっ!」
中を覗き込むと、雄星は上下に激しく震えていた。
「毒が、入りました!念入りに確認したのに……毒蛇です!」
麗宝姉上が雄星に呼びかける声と、
とある侍女がそう叫ぶ声。
「陛下達もお気をつけを!」
目配りする侍女は、翠蓮の配下だろうか。
すると、予想通り、先に着いていた祐鳳が無気力な灯蘭を抱えあげて、外に出てきて。
「翠玉!灯蘭様を、湯治に連れて行ってくる!」
毒がついているかもしれないから、と、付け加えた祐鳳を見て、雄星の足を布で縛りながら、
「そうね!―李妃様の宮に連れて行って。何かあったら、頼っていいと仰っていたから。そこの侍女達は優秀よ。灯蘭様を彼女たちに任せて、祐鳳は下に連絡を!」
「誰を呼ぶんだ!?」
土壇場だからか、声を張り上げる。
止血をするためか、布を巻きながら、汗を拭くこともしない翠蓮と、それを補助する麗宝姉上、冷静に平然を努めている順徳太妃の手はかすかに震えて。
「一通りの薬草とかを持たせて!―陛下!許可をくださいっ。私の弟子が、ここに入る許可を!」
「っ!」
翠蓮は強い瞳で、黎祥を捕らえた。
黎祥はすぐに頷いて、
「許可する」
近くの宦官を呼び寄せた。
恐らく、ここから離したほうがいい。
でないと、どこに毒が、蛇が潜んでいるのかわからない状況だ。
「今すぐ、後宮全体に伝えろ!」
皇太后は無言で、翠蓮の手先を見つめる。
翠蓮は麗宝姉上と共に、何度も雄星に呼びかけて。