【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―
「ならば、どうすれば見舞える?」
「どうすれば……とは」
「何にも触れなければ、良いのか?」
「…………」
どうして、と、翠蓮の顔には映っていた。
どうして、そんなことを言うのかと。
戸惑いに瞳を揺らしながらも、慌てる様子を見せない翠蓮は
「……お約束していただけるのなら」
と、許可を出してきた。
「約束する」
宦官たちを含め、少数で入ろう。
広いにしても、どこに罠があるのか―……。
「―翠玉、大変だ!」
「っ!?麗宝様っ、何が―……」
「雄星の様子がおかしい!」
何故か、突然に部屋から飛び出していた姉上。
目を見開いて、動揺が黎祥一行の中に広がる。
「先々帝の第一皇女は許されるのに、陛下は入ってはならない理由はなんだ?」
「陛下に隠れて、何かをしているのか?」
「そう言えば、麗宝様は―……」
三年前の革命の際、麗宝姉上の母親は黎祥によって、極刑に処されている。
そのことを恨んで、謀反を企んでいるのではないかという疑惑は、三年前から徐々に出ている噂だ。
「―静まれ」
一言、黎祥がそう言うと、真っ青な顔をして、口を噤む。
「不躾な発言は控えよ」
姉上は、黎祥に感謝を示した。
それが嘘であれ、真実であれ、姉上は謀反を企む程、愚かな方ではない。