【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―



「…………翠蓮様」


嵐雪さんは近づいてくると、深く頭を下げてきて。


「嵐雪さん……?」


唐突な行動に驚いていると、


「黎祥様を、愛してくれてありがとうございます……っ」


―感謝されてしまった。


嵐雪さんは泣いていた。


泣いて、ただ、願ってた。


きっと、ずっと、昔から。


(愛っていうのは、何なんだろう……)


分からないけれど、願ってもいいよね。


(この子と、あなたが幸せになれる未来を)


冬の寒さから、春の暖かな陽気な空気へと。


冷え切った、凍えてしまった花が咲き綻ぶように。


「……貴女は病に臥せっているという名目で、宮に閉じこもっていてください。そして、出産致しましょう。その子供は"表向き”に貴女が産んだことにして、陛下へ」


「……」


その時、たまたま思い出してしまったのは、桂鳳のことで。


「嵐雪さん」


「どうかしましたか?」


「……黎祥や、世間に内緒でも、私はこの子の母を名乗ってもよろしいでしょうか?」


「……」


「せめて、この子が物心つくまで。母にも愛されていたという、記憶をあげたいんです」


誰よりも近くで、貴方を愛すことは叶わないけれど。


会えなくなっても、ずっと愛し続けるよ。


どれだけの時を重ねても、貴方を想い続けるから。


だからそれまでは、貴方に関われる理由が欲しい。


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