【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―



「―っ、なっ、何やってるの!龍翔!!」


侍女が、声を上げる。


「杏果!?どうかして―……って、陛下!?」


そして、その声を聞きつけて、中から出てきたもう一人の侍女に泣きついた杏果という侍女。


「蝶雪!助けて、龍翔が!!」


「龍翔!そんなことをしたら、翠蓮様は悲しまれるわよ!」


蝶雪と呼ばれる、飛び出してきた侍女の声で、ぴたっと動きを止めた龍翔という少年は刀を下ろすと。


「……でも、俺はマシ。やばい奴がいる。俺よりも」


目を向けた先。


そこに居たのは、もう一人の少年。


「―何故、殺さぬ?」


ふうわりと、身を翻して降りてきた少年は不思議そうに、首を傾げる。


「殺してはダメなんだと」


「何故?」


「さあ?」


残念、と、いう感じで、首を振る二人。


「当たり前でしょ!」


「何考えてんのよ!?相手は、天下万丈の君よ!?ほんっと、危なかった!!」


蝶雪、杏果という侍女に怒鳴られた二人の少年は、


「……翠蓮がお前達の言うことを聞けと言わなければ、聞かないのに」


と、不貞腐れて。


「アホじゃない!?そんなことをしたら、陛下は翠蓮様を罰さなければならなくなるのよ!?」


「あんたたち、翠蓮様を守るためにしても、やり過ぎ!場合によっちゃ、翠蓮様が殺されるのよ!?分かってるの!?」


まるで、子を叱る母の姿。


そんな叱責にも、少年二人は。


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