【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―



「灯蘭様は男前ですね」


「フフッ、ありがと。って、それ、褒めてる?」


「ええ、褒めてますよ。この間の、勝手に色んなことを探りすぎて、真犯人に命を狙われた話とか……まぁ、わざわざ、ここに来て、兄様が愚痴を仰るので」


「ウグッ……っ、翠蓮も知ってるの!?」


お茶に噎せ、咳き込んだ灯蘭様にニッコリと微笑んで、


「ええ。あの兄様が慌てて、軟膏を作ってくれなんて……驚いたんですよ?まぁ、本当に灯蘭様の怪我に必要な湿布薬ではなくて、慌てて軟膏って言ってきたときの慌てぶりも笑えたんですが」


と、兄様なら、普段は起こさない、とても希少な間違え事件を話す。


「そうなの……?」


笑う翠蓮を不思議そうに眺めた灯蘭様は、


「私には怒ったのに……『勝手に死なれては困ります』って」


唇をとがらせて、ぼやいた。


「それだけ、兄様は灯蘭様のことが大事なんでしょうね」


翠蓮のお腹はかなり大きくなって、産み月まで数週間。


「そうかしら?」


「ええ。……どうしようもない兄ですが、これからもこき使ってやって下さいね」


「こき……翠蓮なら、相談してもいいかしら……」


「え?」


「ねえ、翠蓮、聞きたいのだけど」


寄ってきて、耳元で囁かれたのは。


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