【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―



「っ、やだ、何で、翠蓮が泣いてるの?」


そう言われて、気づく。


湿る目元は、ただ、何かを悲しんでた。


「翠蓮?」


「だめ、です……」


「え?」


彼女を抱き寄せて、呟く。


「そんなふうに諦めたように笑うくらいなら……自分の気持ちを抑え込まないで……」


きっと、それはいい結果を招かないから。


「…………翠蓮、子供出来てから、かなり情緒不安定だよね」


「っ、」


「でも、分かってる。私のことを、心配してくれているのでしょう?」


その言葉に、強く頷く。


すると、灯蘭様は。


「でもね、私、幸せだったわ。兄弟がいて、母様がいて、翠蓮と出逢えて……まだ、十七年しか生きてないけど。私、幸せだったの。だから、これから先の未来がどんなものでも、後悔することはない」


凛とした表情で、困ったように笑う。


「だから、翠蓮がそんなに泣かないでよ」


優しい手が、目元に触れる。


「……翠蓮はね、私の憧れなんだよ」


そう言いながら、灯蘭様は優しく拭ってくれる。


「すぐに無茶をするし、怒られてるし、でも、ちゃんと皆のことを治すし。優しすぎるし、自分のことには無頓着だし、言いたいことは沢山あるけど……うん、翠蓮を追い詰める言葉だってわかってても、言わせて」


「?」


「翠蓮はやっぱり、黎祥兄様の横が似合う」


「……」


「一人の妹として、願うわ。―貴女たちふたりの縁が、結ばれていることを」


二人は似たもの同士だ、そう言われて、いろんな感情が溢れ返って。



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