【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―



「―おわっ!?」


足元蹴つまづいて、転びそうになる。


「大丈夫ですか!?」


安全確認のため、前を歩いていた天華は慌てて駆け寄ってきて、後ろで周辺を探していた蝶雪も異変に気づき、駆け寄ってくる。


天華に支えられて、体勢を整えると、


「?、どちらの子供でしょう?」


と、蝶雪が首をかしげて。


何のことを言っているのかと思って、視線を向けると、翠蓮がつまづいた原因とも言える子供が、きょとんとした顔で翠蓮達を見上げていた。―翠蓮の服をしっかり掴んで。


「だあれ?」


純粋な瞳をこちらに向けてくる幼子。


女の子だ。


とても可愛らしく、瞳は赤い―……。


「皇太后陛下の元にいらっしゃる、先帝の子供でしょうか?」


それを見て、天華が首を傾げる。


そうだ。


蒼星閣に何故いるのかは疑問だが、赤目の幼子など、後宮内では彼女の元にしか―……。


「―こら!蘭怜(ランレイ)!!ご飯はちゃんと食べないとダメだと、何度言ったら……」


呆然としたら、現れた女性。


その女性は翠蓮を目にすると、その場にすぐ拝礼して。


「どうして、ここに―……」


震える声で、尋ねてくる。


きっと、内心、翠蓮が尋ねてくるなんて考えてもい無かったんだろう。


そんな彼女に蘭怜という名の少女は、問う。


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