【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―
「麗宝様……」
傍らで、その光景を見て、泉賢妃が泣いている。
露珠様もまた、涙している。
どうして―……どうして。
「……教えてください。私の、本当の父は誰ですか……?」
闇に溶ける。
どうせなら、このまま果ててしまいたいと。
(父様……)
父様は、父様じゃなかった。
母様も、母様じゃなかった。
(私は、祐鳳兄上たちの妹ではなかった……)
止まらない。
ただ、血の繋がりが直接的になかっただけなのに。
「―麗宝様!!」
扉が、大きな音を立てて開く。
飛び込んできたのは、兄様たち。
「あ……」
「翠蓮!」「っ、ごめん……!!!」
止まらない涙を拭くことなく、顔を上げる。
兄さん達に顔には、疲労がにじんでいた。
こんなことに巻き込まれたりさえしなければ、翠蓮はずっと父様と母様の娘でいられて、兄様達の妹でいられたのかもしれない。
「例え、どんなことがあったって、お前は俺たちの大切な妹だ!」
「そうだぞ。同じ腹から生まれていなくても、父が同じじゃなくても、育ててくれた人は同じだろ?」
「でも……、私、私は―……」
「四の五を言うな!」
頬を、叩かれる。
「頼むから……お前は俺たちの可愛い妹のままでいてくれよ……今、両親は同じだけど、離れて育った姉妹が目の前に現れても……お前を選べるくらい、俺はお前が可愛いんだ」
「っ、」
「大丈夫。血が繋がっていなくても、俺たちは"家族”だ」
頭を撫でられる。
微笑みかけられる。
妹だと、断言される。