【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―
「さあて、人の皆さんは避難したようですし、私達もここから出ようか。―とても、嫌な感じがするから」
「嫌な……?」
黎祥を抱き上げることなんてできない翠蓮は立ち上がらず。
「翠蓮!」
駆け寄ってきた柳太后は重苦しそうだった衣装を全て、脱ぎ捨てていた。
「祥星様は……」
「祥星様?えっと、黎祥のお父様なら、先程、儀式参列者の誘導を―……」
「分かった!ありがとうの、翠蓮!」
柳太后らしからぬ、行動力。
「行くぞ、翠蓮」
飛燕はいとも軽々と黎祥を抱き上げて、
「とりあえず、春宵宮で話そう」
ゆっくりと、歩き出す。
「毒の進行は完全に止めたし、死ぬことは無いわ。傷も塞がっているだろうしね。でも、毒は体内から消えてない。だから、翠蓮、ここからは貴女の仕事」
「……っ」
肩を叩かれて、手が震える。
自分にそんな大業、できるとは思えないのだ。
すると、
「大丈ー夫!」
白麗はそう言って。
「自分を信じなさい、翠蓮。貴女なら出来る」
そう、断言してくれた。
神殿の外に出ると、多くの人で賑わっていて、飛燕たちの存在に気づいた人間達は、深く、その場に拝礼した。
「下手人は」
翠蓮は深呼吸をして、努めて静かに、尋ねる。
すると、明景が歩み出てきて。