【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―
「平成?」
思わず聞き返すと、
「あら!彩苑じゃないの!」
白麗は顔を輝かせて。
「相変わらず、美しいわね!あら、でも……」
「母上、彩苑は人間です。人は死にます。彼女は翠蓮。彩苑の魂を引き継ぎし、生まれ変わりです」
翠蓮の戸惑いと疑問は完全無視で、突進してきた儚げな容姿に似合わぬ元気な淑女は、飛燕の説明を聞いて、
「そうよね。忘れてたわ。人はいずれ死する生き物だものね」
と、納得する白麗。
「私が生きてるのは、蒼巌のお陰だったわ〜」
―うん、どうやら、自分調子な女性らしい。
考えてみれば、彩苑の頃に会っていた白麗もそんな感じだったか……。
「―あ、と、いうか、この場面でのんびりしているのもいけない感じ?」
白麗は翠蓮の手元にいる黎祥を見て、
「あらあら、相変わらず、無茶するのね」
と、黎祥の頭を一撫で。
「癒癒昇華」
ニコニコ笑いながらの所業だけど、たったそれだけで、冷たかったはずの黎祥は身体は熱を持っていく。
「今、何を―……」
「ん?蒼巌に起こされて起きてみたら、皆いるし、嬉しくて、年甲斐もなくはしゃいじゃったけど、どうやら、今、この国はまた、大変みたいじゃない?黎祥は既に飛燕達の加護を受けているみたいだし、そう簡単には死なないんだけど」
白麗は呼吸をちゃんとする黎祥を見て安堵した翠蓮の頭を撫でると、
「愛する人が死んでしまう恐怖は、誰よりも知っているからね」
と、優しく微笑んできた。