【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―
「傲慢だな」
「……」
「お前の考えを一方的に押し付けて、それで、人を傷つけて。表貴人たちの顔を覚えていない?それはそうだろう。だが、名前と顔の一致ぐらいはするし、趣味嗜好などは一通り、頭に入っているよ。私が知りたいのは、翠蓮を害されることを恐れて、彼女たちを弑したというのなら、何故、秋遠を、雄星を、傷つける必要があったのか、ということだ」
「……っ」
「泉賢妃から、懇願された」
皇帝は、この皇帝は、違うと知っている。
先帝とは違う。
先帝のやり方を、考え方を、真っ向から否定して、先帝を討った人だ。
姉上を殺したのは、この人じゃないと知っている。
それでも、何かを恨まずにはいられなくて。
「―……露珠様のお母様は、とても不思議な御方だったそうです……」
私は小さく、騙り出した。
馬鹿らしくなった。
中りたかったのは、
殺したかったのは、
困らせてやりたかったのは、
決して、目の前の君主ではなかった。
もっと早く、生まれていたら。
そうしたら、あの王を殴ることくらいは出来たかもしれないのに。
たった一回だけでも殴れたのなら、自分の命と引き換えでもよかった。
その場で斬り殺されてもいいから、姉様を忘れないでいて欲しかった。