あの時からずっと、君は俺の好きな人。
冗談交じりに彼は言った。

いかにも心配してます、という感じではなく、俺がそうしたいから、美結に怒られるのが嫌だからーーそんな風な押し付けがましくない優しさ。

ーーなんでこう、この人はいつも私の心にすっと入ってくるのだろう。


「ありがとう……」

「いや、だからいいってば。三上さんも怒りそう。怒ったらヤバそう。だから一緒に行きます」


確かに彼女が怒ったらヤバそうだな、と想像してしまい私はくすりと小さく笑った。

ーーしかし。

新幹線のエンジン音が聞こえてきた。間もなくホームに到着する。心臓の鼓動が不穏な調子で早くなる。

ああ、やっぱりダメだ。また足がすくむ。

と、絶望した私が早くも諦めかけた……その時だった。

ーーえ?

震えていた手の平に、柔らかな温もりを感じた。驚いて見てみると。

水野くんが私の手を優しく握ってくれていた。柔らかで優しい微笑みを浮かべ、私を見つめながら。


「これで少しは怖くないかな?」
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