あの時からずっと、君は俺の好きな人。
目を見開いて水野くんを凝視していた私だったが、彼の一言ではっとする。

彼の手の平は、男の子らしく少し節くれだっていたけれど、温かくて優しくて大きくて……怯える私を包んでくれているようで。

眼前に恐怖の対象がやってきたというのに、水野くんが私を守ってくれているように思えて、私はまったく畏怖の念が生まれなかった。


「ーーうん。そんなに怖くない」

「そっか、よかった」

「本当にありがとう。ーー水野くんが手を握ってくれたから、怖くないみたい」


私は瞳の端に涙を溜めながらも、笑顔を作って言う。

しかし言ったあとに、これでは好きだって言っているようなものじゃんか、と少し後悔した。

水野くんは、私を見てやはり穏やかに微笑んでいた。しかしその顔は何故か少し切なそうに見えて、私は不思議に思った。

そして彼は、こう言った。


「いいっていいって。ーーだって俺はそのためにここにいるんだし」

「…………?」


そのためにここにいる? どういうことなのだろう。
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