あの時からずっと、君は俺の好きな人。
彼はたまたま新幹線に乗らなかった私を見つけて、その優しさで放っておけないから付き合ってくれているはずだが。

水野くんの言い分だと、今の状況はそんな偶然のハプニングではなく、何か必然めいたもののような、なるべくしてなっているとでも言うような……そんな意図がある気がした。


「あ、開いたよ。ーー行こう」


そんなことを考えていると、新幹線の乗車口が開いた。特にためらいは生まれなかった。

なぜたかが乗り物ごときにあそこまで怖がっていたのだろうとすら思えた。

水野くんが私の手を引きながら、新幹線へ乗り込む。私も繋いだ手に従い、乗車した。

ーーすると。

その手の感触に、妙な既視感があった。水野くんと手を繋ぎ合ったのはこれが初めてのはず。

そんな嬉しい出来事が過去にあったとしたら、私が忘れているわけはない。

だけどこの手の力加減。温もり。感触。何故か久しぶりで懐かしい、と思えた。


「よし! 乗れたね!」
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