あの時からずっと、君は俺の好きな人。
素知らぬ顔をして、返すべきなのだろうか。

だけど彼がこれを持っていたということが気になりすぎて、平然とした顔をして接せられる気がしない。

水野くんはそわそわした様子で足元を探索しながら、私の方へと近づいてきてしまった。会話をしないと不自然な距離に。


「水野くん、どうしたの?」


すると下を向いていた水野くんは顔を上げた。彼は一瞬はっとしたような表情をした。ーーそして。


「ーーなんでもないよ」


水野くんはいつものように人懐っこい笑みを浮かべたが、その笑顔はどこか引きつっていた。

「そうなの? ご飯も取らないでうろうろしてるから、何かと思って」

「あー……気にしないで。本当になんでもないからさ。よっしゃ、飯取りに行くわ」


すると水野くんは、男子がいまだに集まっているお肉のコーナーへと向かってしまった。

ーー水野くんは、あのミサンガが元々私のものだということを、恐らく知っている。

今の彼の素振りから私は思った。

しかしなぜ? どうして持っているの? 6年前のものなのに。ここ、大阪でなくしたはずのものなのに。

ーー水野くんには何か、私が想像もできないような、大きな秘密があるのではないだろうか。

彼の不可解な行動に、私はそんな気すらしてきたのだった。
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