セカンド・プライオリティ
その時、カラ…とかすかな音が聞こえて。
音のしたドアの方に反射的に顔を向けると、そこには心配そうな表情を浮かべた麻子ちゃんが立っていた。

「え…」

少し遅れて顔を向けた颯の瞳は、一瞬大きく見開かれて。
2人はほぼ同時に何かを言いかけて、それから揃って戸惑ったように口をつぐんだ。

なんなんだこの空気は…

静まり返った室内で言葉を交わさず、謎に動きだけをシンクロさせる2人に耐えきれなくなり口を開く。

「とりあえず、入ったら麻子ちゃん」
「あ、うん…」

後ろ手に扉を閉めた彼女がゆっくりとこちらへ歩み寄る。
ベッドの側までやってきた麻子ちゃんに一つしかない椅子を進めると一度は断られたものの、譲らない俺に折れるようにして彼女はおずおずと腰を下ろした。

「なんで麻子が…」
「涼くんに連絡もらって…」

麻子ちゃんの言葉を聞いた颯がじろっと俺の方に視線を向けたけれど、気が付かないフリを決め込む。
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