セカンド・プライオリティ
この考えが正しいのかどうかはわからないけれど…私たちの間には、積み上げた信頼の上にそれが成り立っていると思っている。

だけど信頼は、深くなればなるほど当たり前という言葉の裏に感情を隠してしまうのだと気が付いた。

きっと今年の記念日は一緒にいられないのだろう。
わかっている。それがしょうがないことだということも。
なのに…それを素直に受け入れたくない自分が、今確かに、ここにいる。

涼くんは、いつだって私の仕事を応援してくれて。
だからこそ私も彼の仕事を応援できる存在でいたい。いなくちゃいけない…はずなのに。

ゆっくりと親指をスライドさせて開いた、手のひらの中のスマホの画面。
すぐに見つかった彼のページに一つ、また一つ…文字を打ち込んでいく。

「会いたいよ」

その時、聞こえてきた小さな音に引き戻されるかのようにふと我に帰った。
静まり返った室内に響き渡るポットからの無機質な音は、だんだんと大きくなっていく。

「…なんでこんなに簡単なこと、言えなくなっちゃったんだろう」

唇からこぼれ落ちた言葉は、誰の耳にも届くことはなくて。
ただただ、自分の中に染み込み、深く沈んでそのまま消えていった。
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