セカンド・プライオリティ
「はい!では一旦確認入りまーす」

聞こえたスタッフさんの掛け声に小さく息を吐くと、横からクスッと笑う声が聞こえた。

「疲れちゃった?」
「あ、すみません!」
「いや、撮影中は問題なかったと思う。けどちょっといつもと様子が違う気がしたからさ」

まだ全快でないにしても、そんなに顔に出ているのかとへこみそうになった私の心情を知ってか知らずか…笑顔の大輔さんがそう言葉を続けた。

『オトナ女子のためのシチュエーション別 正解コーデ&マナー』

そんな今回の撮影テーマの中で相手役をしてくれている彼岩永大輔さんは、同じ事務所の憧れる先輩の一人である。

「次のシーンは…なんでもない日に出かけたレストランで幸せそうに料理を食べる2人、か」
「そうみたいですね」
「美己ちゃんってさ、なんか一つひとつが綺麗だよね」
「え?」

唐突な言葉に思わず目を瞬かせると、少しだけ焦ったように口元を手で覆った彼が口を開いた。

「や、変な意味じゃなくって!美己ちゃんっていつも仕草が丁寧なイメージがあって、目を引くって言うか。ほら、所作ってその人の内面が映されるって言うし」
「あ、ありがとうございます…」

まっすぐな言葉で褒められて、なんだか照れ臭くなって顔を伏せる。
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